「紺青の拳」を見る前に歴代キッド映画を見て欲しいと思った理由

今年の劇場版コナン「紺青の拳」を映画館で見て感動して、ここ数年でコナンを好きになった人や過去映画をあまり見たことがない人にもぜひ歴代キッド映画を見てから改めて「紺青の拳」を見て欲しいなと思っていたのですが、今日金曜ロードショーで満を持して「天空の難破船」の放映がありますね。

嬉しいので記念に書いた「紺青の拳」の感想をツイッターから引っ張ってきました。

下記複数コナン映画や原作のストーリーに触れた、かなり偏った感想です。

 

 

紺青の拳観に行く前に他のキッド出演するコナン映画見て欲しいと思った理由は新蘭なんですけど、どういうことかというとキッド出演映画で毎回キッドに騙されてきた蘭が紺青の拳ではじめてキッドに勝利するからなんですよね。

工藤新一と怪盗キッドは作者を同じくする作品の主人公ということで元々顔がよく似ている。(アニメにおいては声も同じ)
このメタ的な要素は原作でのキッド初登場回でもネタにされているけれど(※)、映画においてはこのことを利用してキッドが工藤に変装(髪型変えるだけ)をするのがほぼ定番になりつつあったのはコナン映画をご覧になる方ならご存知のことだと思います。
(※たまたま素顔のキッド=黒羽快斗を街で見かけた蘭が新一だと勘違いする)
キッド初登場の映画である「世紀末の魔術師」では、飼い鳩を助けてくれた礼として、コナンの正体が工藤であることを疑う蘭から工藤を助ける形で工藤に変装。
さらに「銀翼の奇術師」、「天空の難破船」、「業火の向日葵」でも様々な理由からキッドは工藤に変装して登場し、サブメインキャラまで総登場する映画10周年記念のお祭り映画である「探偵たちの鎮魂歌」以外の登場作で、キッドは毎回工藤に変装しているということが分かります。
ただし今回「業火の向日葵」での変装については一連の内容を語る上で関係ないので無視します。とはいえ、私が個人的に「業火の向日葵」を繰り返し見たいという感情が無く劇場とテレビ放送で二回見たきりなので、実際には触れるべき要素がある可能性も無いことも無いのかもしれませんが、いずれにせよ深く内容を覚えていないしこの作品を無視しても今回の話に一切支障はないため無視します。

さていよいよ本題です。前置きが長くてすみません。
「世紀末の魔術師」で工藤を助けるために工藤に変装したキッドは、「銀翼の奇術師」では怪盗としての仕事を円滑に進めるために工藤に変装して現れます。
というのも、変装の達人であるキッドですが頬を強く引っ張ればマスクがはがれて素顔が明らかになることが既に警察にも知られており、(大衆の前で堂々と変装解除するからそうなるんやで)対策として現場に近づく人間の頬を引っ張って確認するという方法を警察がとっていたから。元々顔も声も似ている工藤であればキッドにとって成り代わるのは朝飯前ですし、またキッドはコナンの正体が工藤であるという秘密も当然知っているため、うっかり鉢合わせたりする危険性もなく超安全。しかも工藤は事件大好き探偵小僧で高校生探偵としてある程度警察からの信頼もあるため、唐突に出てきて現場に顔を突っ込んでも何ら違和感がないという超優良物件。もちろんコナンとコナンの正体を知る人物には問答無用でキッドだとバレるわけですが、正体を隠しておかなければならないコナンは工藤新一が偽物であるという理由を説明することができないわけですから、まあうまいことやれるわけです。
そんな中、突然失踪して心配していた幼馴染が久しぶりに戻ってきたわけですから、当然幼馴染でありヒロインの蘭も工藤と接するわけです。
青山作品の主人公はキザだけれど好きな女の子にはなかなか素直になれないので、キッド扮する工藤がキザったらしいことを言ってきて蘭は若干戸惑うのですが、この時点ではまだ正体を怪しむわけではありません。
「世紀末の魔術師」と同じく、キッド扮する工藤を本物なのだと信じて接するのですが、物語が進行して最後に、あの時の新一はキッドだったのだと気づくというオチがあります。

そして、続いての「天空の難破船」。この作品では、元々キッドは工藤に変装するつもりはなくモブに変装していたのですが、ひょんなことから蘭に正体を見破られてしまい、しかも飛行船という密室の環境だったため、自分の身を守るためにとっさに工藤に変装し、「怪盗キッドの正体は実は工藤新一であり、事情があって怪盗をやっているから警察に黙っていて欲しい」という嘘をつきます。
「銀翼の奇術師」の一件でキッドの素顔が元々工藤に似ていることを知っていたので、はじめは信じなかった蘭も、キッドがたまたま盗み聞きしていた工藤と蘭の幼い頃の思い出話をとっさに披露したことでまんまと丸め込まれてしまいます。
余談ですが、怪盗キッドの正体が実は新一だったかも!?と思わされた蘭は、いったんは警察に対し口をつぐみますが、最終的に涙ながらに工藤に自首を勧めるというシーンがありそれがメチャメチャメチャメチャ好きです。
蘭がキッド=工藤という衝撃的な事実(嘘)に動揺し戸惑いながら真剣に思い悩み、最終的に正義の心に従って自首を勧めるというのがもう……蘭はどれだけ魅力的で最高なヒロインなんだと涙に次ぐ涙ですよ。
元警察官の父親と弁護士の母を持ち、正義と優しさを持ち合わせスクスクと育った蘭……悪夢のニューヨークで「どんな悪人が相手であろうと人が人を助けるのに理由なんて必要ない」(要約)という幼馴染の言葉に救われた蘭……公式angel……。
「網にかかった謎」(アニメ版タイトル)という大好きなエピソードがあるんですけど、この話で蘭が「勇気というのは身を奮い立たせる正義の言葉だから人を殺す理由に使ってはならない」(要約)と犯人に言うシーンがあって、蘭というキャラクターの魅力を象徴するような言葉だなと思っています。蘭は空手(概念)により肉体的にも強い女の子ですけど、本当に強いのは心なんだということがよく分かります。空手が使えるから強いんじゃない、優しくて勇気があるから真に強いのであって、それは蘭の正義感が源なんですよね。

閑話休題

天空の難破船」において、キッドの変装を怪しみながらも騙されてしまった蘭は、この映画でも最後に自力でキッドが工藤ではなかったということを見破ります。

そして業火は飛ばしていよいよ最新作「紺青の拳」。この作品でもキッドは工藤に変装し、大胆にもシンガポールという旅先で蘭や園子たちと行動を共にしています。
周囲が工藤=キッドだと疑う様子はなく、コナンも事情があるのでとりあえずキッドに協力して工藤に変装することを渋々許容している状態。原作・アニメで工藤と蘭は付き合い始めているため、映画でも恋人らしいシーンがちらほらあったりします。
今回の映画は園子と京極さんの関係も主軸のひとつであるため、蘭が新一の正体を疑ったりするシーンが無いことに対する違和感は個人的にはそれほどなかったのですが……

最後の最後、なんと、今回の映画で蘭がわりと早い段階から工藤=キッドだと気づいていたことが明らかになります。シンガポールから日本へ戻った空港で工藤に腕をからませて歩きギリギリまで油断させ、密かに連絡して待ち伏せていた警察に捕まえさせようとする、というオチがあったのです。
劇場で観ていたわたしもキッドと同じく完全に油断していました。だからこそ、ものすごく感動しました。
ここまで長々と述べてきた通り、歴代キッド映画で蘭は何度もキッドに騙されてきました。怪盗キッドは華やかでかっこよく、作中でも熱狂的ファンの多いキャラクターではありますが、正義感の強い蘭にとっては泥棒でしかありませんし、しかも探偵である幼馴染の、そして今では恋人である工藤の名を騙るということは、蘭にとって許し難いことなのだろうと想像できます。
キッド映画でキッドが工藤に変装するのが視聴者にとってお馴染みになっているということは、それだけ蘭がキッドにしてやられてきたということであり、そんな蘭がついにキッドに一矢報いた。しかも、恋人になったこのタイミングで……。

いち蘭推しのオタク、新蘭推しのオタクとして本当に嬉しかったですし、既存キッド映画を見たことがない人、見たはずだけど記憶が薄いという人はぜひ過去作を見た上で改めて紺青の拳を見て頂けたら良いな……そう思いました。
本当に良かった。
蘭、おめでとう。映画スタッフありがとう。
いつかまた映画でがっつり丸々新一と蘭の物語が見られたらいいなと思いつつ、原作で恋人になった二人にこの先待ち受けるのは結婚だと思うし二人の関係が大きく動くのだとしたら原作でやって欲しい気持ちもあるので、これからもささやかな新蘭要素を見られたら良いなと思います。